この間、カメラが好きな友人と会った。N君と呼ぶことにする。
iPhoneのカメラが高性能すぎるため、一眼レフなどのきちんとしたカメラを持つ人間が少ない令和の中で、カメラについて話ができる数少ない友人の一人だ。
N君はカメラが好きで、写真(スチル)よりも動画(ムービー)のほうに力を入れているらしく、instagramなどで自分が編集した動画をアップロードしたりしている。
N君が作る動画はとても上手であり、身近な友人がクオリティの高い動画を生み出すことに対して、私は純粋な憧れと尊敬の気持ちが湧いてくる。
私は動画編集が得意ではないので、N君から動画編集のコツだったり色々なことを教えてもらっている。
カメラを使った副業事情
N君と近況を話し合う中で、最近カメラや動画ではどんな活動をしているのかを聞いてみた。N君は動画編集が上手いので、色々な人から依頼を受けて、動画を作ったりしているらしい。
普段のN君はサラリーマンをやっているので、動画編集の活動はいわゆる副業になるのだろう。
「副業」と聞くと、どうしてもお金のことが気になる。
不躾で大変申し訳ないと思いつつも、N君の副業事情について聞いてみたら、また色々と教えてくれた。さすがはN君である。
まず、カメラを使った副業に取り組む場合、動画の撮影・編集が稼ぎやすいらしい。写真をメインにした副業の道もあるのだとは思うが、いまの世間の需要的には、動画の道を進む方が効率がいいようである。
N君曰く、カメラ・動画の副業でお金を稼ぐのにおすすめなのは、結婚式のカメラマンらしい。
結婚式一回(一回という数え方があっているのかはわからない)がだいたい半日の稼働で、その半日でもらえる報酬は2万円くらいとのこと。
カメラやレンズなどの機材は自分で準備する必要があるらしい。
また、結婚式での動画撮影のやり方については、カメラの設定や動画の撮り方などは細かく指示があり、その指示に従ってカメラを動かしていくことになるらしい。
結婚式カメラマンは動画を撮るだけで良いらしく、動画編集はやらなくていいらしい。
N君の話を聞く限りでは、カメラを持っていない人や、カメラの知識がない人だと、動画撮影の副業は割とハードルが高いものなのかもしれない。
カメラとレンズは自前らしいので、きちんとした動画が撮れるカメラ・レンズを準備するとなると、30万円〜40万円くらいは覚悟しないといけないと思う。
ただ、すでにカメラを持っていて、動画を多少なりとも撮ったことがある人からすると、お金の面ではかなり魅力的な副業だと思った。
半日の稼働で2万円。時給換算すると5000円くらいになる。週末の土日に頑張れば、5万円くらいはもらえるかもしれない。副業としては優秀な部類に入ると思う。
カメラでお金を稼ぐことに対する違和感
N君から魅力的な副業の話を聞きながらも、なぜか私自身には、他人事にしか聞こえなかった。
「そんな世界があるのか。お金が稼げてうらやましい。」というくらいに、第三者的な感想しか出てこない。
もし自分もN君のような副業をやれば、趣味であるカメラを触りながらお金をもらえるし、写真や動画に関してのプラスの経験になるのは間違いないと思う。写真や動画の技術的な面でも、多分に良い影響があるに違いない。
それでも、カメラを使った副業を自分自身がやってみようという気持ちが全く起きない。
かなり大きな違和感を感じるし、なんなら嫌である。なぜかはよくわからない。
ただ、この違和感はN君には伝える必要は全くないことなので、当然ながらN君に対しては何も言わない。N君が副業をやっていることについては普通に興味がある。その後もN君とはいくつか話をして、その日は別れた。
違和感の原因
N君には申し訳ないが、私自身がカメラを使って副業をすることを想像すると、自分でも理由がわからない違和感を感じる。(別にN君は副業を勧めてきたりしていないので、「申し訳ない」という気持ちもお門違いかもしれない)
この違和感を分析することで、写真という趣味に対する私の奥なる考えがなにか見えてきそうなので、少し掘り下げてみることにする。
カメラを使った副業の魅力な点
- お金がもらえる
- 行ったことがない場所で経験が積める
- 商業カメラマン的な活動(クライアントワーク)ができる
N君の副業の話で、私がいいなと感じたところは、このあたりである。
お金のことは、やっぱり魅力的だと思う。
あと、クライアントワークには、少し興味がある。写真家やクリエイターと呼ばれる人たちは、ほぼクライアントワークをやっているのだろうし、「クライアントが求める作品を撮る」という経験は、写真・動画に関わらず、技術的に大きなものになる気がする。
逆に魅力的ではないと感じる点
逆に、「これはちょっと嫌だな」思うことを考えてみる。
- 自分が撮りたい写真・動画ではない
- カメラに関して嫌な思いをするかもしれない
嫌だと思うことは、主にこの2つだった。
自分が撮りたい写真・動画ではない
まず、自分の休日の時間が減ってしまうことが嫌だと思った。単純な理由である。
しかし、「平日の仕事で疲れたから休みたい」というようなものではない。「自由な時間があるのなら、自分のための写真が撮りたい」という具合の、ある意味で積極的な「嫌だ」である。
私は写真が好きではあるが、腕は全くないので、自分が撮った写真はまだまだ好きになれない。
なので、もし自由な時間(副業をする時間)があるのなら、自分なりの写真をもっとたくさん撮ったり、他の人の写真を見て勉強したりしたい、と思う。
どうやら私は心の奥底で、写真と向き合う時間が足りていないと感じているようである。
確かに、私には小さい子供がいるので、休日は基本的に子供と過ごしている。
私にとって、自分の子供は最高の被写体であるが、正直なところ、子供以外の写真も撮りたいと思うことがある。よくある。しかし、子供以外の写真を撮るとなると、結構大変なのである。
例えば、子供と公園を歩いている。
「ここの風景を撮りたい」と思い、子供に対して「ちょっとここで待ってて」と言ってみる。
子供は待たない。常に何かを見つけながらトコトコと歩いて行く。
歩いて行くので、私はすぐにでも追いかけないといけない。
カメラの設定をオートにして、画角だけモニターでなんとか確認しながら、1枚だけシャッターを切る。脇を締めてファインダーを覗く時間なんてない。
こんな感じで、小さい子供と一緒だと、「写真を撮る」という作業が難しい。別に、それが嫌だという訳ではない。自分のための写真を撮るよりも、子供と一緒に歩いている方が楽しい。
でも、副業で他人の結婚式を撮っているような時間はない。そんな時間があるなら、子供を公園に連れて行くか、自分一人でカメラを持って出かけたい。
愚痴みたいになってしまった。よくない。
カメラに関して嫌な思いをするかもしれない
副業について嫌だなと思うことの二つ目は、カメラで嫌な思いをするかもしれないことである。
カメラに関することで、嫌な思いをしたくない。
カメラを使った副業に抵抗があるのは、9割はこの理由が原因であるような気がする。
カメラを副業にするとなると、当然だけれども、相手(クライアント)という存在がいる。この相手というのは、こちらに対してお金をくれる人であり、こちらはその相手に対して、動画なり写真を提供しないといけない。
クライアントは、こちらにお金を支払うのだから、これまた当然だけど、よりいいものを欲しいと思うはずである。
- もしも、カメラの不具合で、写真や動画が撮れていなかったら
- もしも、私が編集した画像・動画が気に入らずにがっかりされたら
- もしも、トラブルが起きて怒鳴られたりしたら
上の「もしも」は、副業を始めると、おそらく全部経験することになると思う。そして、いまの私が想定しないような、別のトラブルも起きると思う。
私は働いているので、お金が絡むと、色々なことがあることを知っている。お金が絡んだことによって、人にがっかりされたり、人から怒られたりするとなると、カメラが嫌になってしまう可能性がある。
それだけは嫌である。
私は、写真やカメラが嫌いになるのが嫌なのだと思う。せっかく見つけた趣味である。
今のところ、「写真」以上に打ち込める趣味は持っていない。この先も、写真以上の趣味が見つかるかどうかは、わからない。多分見つからないと思う。
お金を稼ぐ手段は、いくらでもあるような気がする。だけど、睡眠時間を削ってまで打ち込めるような趣味は、簡単に見つかるものではないと思う。
私は、そんな大切な趣味を、お金なんかのために、台無しにしたくないのだろう。だから、副業(お金)とカメラを、近づけたくないのだろう。
趣味は大切にしたい
N君から聞いた副業の話をきっかけに、私自身の趣味に対する考え方を探ることができた。かっこつけたようなことまで書いてしまった。
あくまで私個人の考えではあるが、せっかく見つけられた趣味を、ちょっとしたお金で切り売りしたりはするべきではないと思う。
ちょっとしたお金は一時的に人生を豊かにしてくれるかもしれないが、趣味が人生にもたらす豊かさは、到底比べ物にならないほどのものではないかと思う。
「好きなことで、生きていく」というYouTubeのキャッチコピーがあるが、私の考え方とは正反対といってもいいものである。
現代のYouTuberと呼ばれる人たちは、私よりも上手い生き方を持っているのかもしれない。